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2008年 07月 28日
前のエントリで書いた中野剛志氏は隔月誌『表現者』で連載を持っている方なのですが、先月の話はとてもおもしろくて、独特の形での世代論でした。
は・ど・うはまずいだろー(笑)と突っ込まずにはいられないタイトルから、本文では一転して本質的な議論へ。おもしろすぎる。中野さん。 ただ、内容は本当に深刻。同じ雑誌の別の筆者たちがサブプライム・ローン問題を金融資本主義の基盤の脆弱さや、マネタリズム(拝金主義)、余剰資金による偽装バブル、金融管理技術の限界等々で説明しているのに対して、筆者はより本質的な構造変化が起きているのではないかと指摘する。詳しくは本文に譲りたいが、実体経済自体に変化が起こっているとする筆者の見解は今後のスタンダードになっていくものと思われる。 まあ、それはあまりにも当然のことなので、本論考はここから景気循環の妖しい仮説、いわゆる”コンドラチェフの波”なる議論の話に一気に舵を切る。この仮説、約五十年の周期をもって景気の谷が周期的にやってくるとするものだが、あまりにも実証しがたい思いつきの説のように感じられ、誰もがこの議論の展開には意表を突かれるだろう。(正直僕も「え?」ってなった。五十年は……トンデモっぽいでしょ^^;) しかし、中野さんはけっこうマジメで、というのも、この説を支持できるある根拠があるというのだ。 それが世代論だ。世代論はここ最近急速に力を持つようになった議論で、特に二十代三十代の人たちが発言力を持ってきて(ご老人たちの発言力が低下するに従って)、注目を集めるようになった。おそらく年上の顔色ばかり窺っていた人たちが、自分より年下の人数が増えて無視できない勢力になったときに、はたと耳慣れない意見が多いことに気づいたことが人口に膾炙したきっかけじゃないかと思う。同時に、若い人自身が自分の置かれた状況を世代論的に説明することが多かったので、世代論的に言うとw青・壮・老、全員の利害が一致したのだろう。(いや、老の人はとりあえず流行に飛びつきやすいということで。よくわかってなくても権威で押し切れると思ってる人がほぼ十割じゃない?) さて、この波の説から導かれる中野さんの仮説によると、これからの日本はどん底へ向かっていくことになる。(←こういう分析のときにナショナリズムを使えると便利ですヨ[ex."日本"]。ネイションとステイトの区分はしっかりとね。)要約して言うと、旧世代〈オールドタイプ〉の人たちの世界観が現実に適合しなくなり、間違った処方箋を出しまくった時期を長年過ごしてきたため、不況を克服できないから。世界観を更新する新しい世代〈ニュータイプ〉が力を持ち、考え方の枠組み=パラダイムを正しい・現実に適合したものに変更するまで、この状況は改善されないという。 じゃあ、僕たちの世代でそれがなされるかというとちょっと無理っぽくて、ニュータイプは平成生まれ以降の人になるらしい。
かなり悲観的な分析。物語的に言うなら、とにかく伏線を張っておく時期とでも言えるでしょうか。やっぱり追い詰められてからの逆転が物語を熱くするのは間違いないですからね~。 さて、もう一人の思想家なんですが、名前を出しておくと福嶋亮大(ふくしま・りょうた)さんです。 彼も世代論に反応していて……基本的には物語論を展開している人で、世代論については反(アンチ)というか無(そんなもの効力を持たない)派に属していると思うんですが、彼の展開する議論もとてもおもしろいのです。 いわゆるポストモダン派の後継っぽい語り口でありながら、そこには煌めくものがある気がします。普遍性に向かう力強さというか、今の現実を"自分たち"という特殊性にどう落とし込むかという(普遍的な)実験性というか。ブログ・仮想算術の世界から彼の苦闘を辿ることができます。(『ユリイカ』に連載も持っているそうです。興味のある方はぜひ) 次回はそこらへんについて書きたいと思います。
by nsrelated
| 2008-07-28 01:37
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